「安いニッポン 『価格』が示す停滞」を読んで

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感想

本書は日本が諸外国と比べて、物価、賃金、不動産の安い事例が紹介されている。まるで「ファクトフルネス」のクイズのような意外性がある。 

国内だけで見れば、現在のデフレは歓迎すべき面もある。良い品が安く買えるからだ。 一方で安さの国内均衡は外国から見ると、お買い得となる。外国資本も良い品が安く買えるからだ。 

その結果、技術力がある企業が買収され、優秀な人材が海外流出し、一等地の不動産は買われる。もちろん良い面はあるが、将来は海外資本の植民地になるかもしれない。 

日本のデフレの原因の一つは人口の減少であるため、ある一定まで落ち着くまでデフレ傾向は続くのではないかと思っている。その頃の日本は、国際的な地方都市国家となっているのだろうか。

 

本書からの引用

ニッポンの「安さ」の実態

エコノミスト誌によると、2021年1月時点の計算では、日本で390円のビッグマックアメリカでは5.66ドルだった。同じものの価格は世界中どこでも同じだと仮定するならば、為替レートは1ドル68.90円でもおかしくない。だが、実際の為替市場では1ドル104円前後で推移しており、円は約34%過小評価されている計算になる 。

 つまり物価の違いが無くても、日本の賃金は安いのだ。日本だけが低賃金なのは、労働生産性が停滞している、多様な賃金交渉のメカニズムがない、といった点が挙げられる。

 

ドイツの生産性が高い理由

ドイツの生産性が高いと言われる所以は、価格にあったのだという。自動車など多くのものが、日本より高い。甲斐所長は「ヨーロッパで5倍の時間をかけて作った車も10倍の価格で売れば、金額の生産性は2倍になる。それこそがドイツの生産性の高さの理由だった」と分析する。 

特にドイツは「需要が低い時でも絶対に儲かるように」と、需要変動のボトムに合わせた生産能力で生産設備を持つため、例えば自動車ならディーラーに行くと「納期は半年後」いいと言われることもよくある。

だが自動車に限らずドイツ製品はブランドで差別化されているので、多少の価格差で消費者が他ブランドに流れることは少ないという。つまり、市場で欠品しても消費者は待つしか選択肢がないのだった。

一方で、日本は欠品しないように需要変動のピークに合わせて生産能力を持つため、需要が落ち込んだ時に値下げをしてしまう。

 

日本の優秀な人材も買われている

例えば日本を代表する大企業の NTT グループ。 NTT の幹部は「研究開発人材は35歳までに3割がGAFAなどに引き抜かれる」と明かす。新卒を大量採用して手厚く育ててきたものの、近年では IT人材の供給源にもなっているのだ。そこで若手であっても優秀な人材には3千万円を支払う制度を取り入れた。 

 

日本の不動産も買われている

世界のスノーリゾートに比べるとニセコは非常に安い。利回りの良くて狙い撃ちにされているので、まだまだ外資系企業の開発が来るだろう。

 

国、企業、個人はどうすべきか

例えば終身雇用を止めて、年功序列ではなく成果に応じた給与体系になることを、自分たちは受け入れられるのか。こういった私たち個人にとって身近なテーマから、解雇規制をどう見直すかという政治の決断まで、それぞれが洗濯を問われているのかもしれない。 

未だに企業が参入できない分野の規制を撤廃し、競争を自由化させること。農業、医療、教育、法務などの分野だ。たとえば農業は減反政策などの非効率だが回りまわって低賃金になっているが、生産性を上げて高い賃金をもらえる仕組みにすれば、新たな労働者の流入する。改革しなければいけないと分かりきっているのに、日本はできない。

 

デフレの状況下では、消費者余剰が大きい

安い日本は質の良いものを安く供給しているということであり、それはまさに適正な値付けができていないという意味だ。良いものを安く売ると、「消費者余剰が大きい」ことになりと経済構成が高いといえるが、消費者余剰は GDP にカウントされない。また、企業の利益が出ないので賃金を上げられず、 GTP が増えなければ税収も上がらず、社会保障サービスの財源の確保できない。 バランスが重要だ 。