村上春樹「騎士団長殺し 第1部顕れるイデア編」を読んで

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感想

何気なく手に取った本を開いてみると、短文で構成され、複雑な構文はなく、読みやすい文章だった。読み始めると色々な伏線が現れてくるが、読み進むうちに見事に物語として収まっている。まるで内村航平体操競技の着地のように、ストッとフィニッシュを決めている。しかし、見事に収まった伏線を組み合わせることによって生じる新たな疑問は、次の編への誘い水となって私の読書意欲を搔き立てる。小説は滅多に読まないけれど、素直に引き込まれてしまう魅力があった。



本書からの引用

 

 夫婦の休日の使い方

週末や休日には私も絵の仕事を休み、二人であちこちに出かけた。美術展に行くこともあれば、郊外にハイキングに出かけることもあった。ただあてもなく都内を歩き回ることもあった。親密な会話の時間を持ち、お互いについての情報を交換しあうことは、2人にとっての大事な習慣になった。それぞれの身に起こった大抵のことは包み隠さず、正直に語り合った。そして意見を交換し感想を述べ合った。

 

 人を判断しない

「でもあなたは私のことを判断しようとはなさらない。違いますか?」言われてみれば確かにその通りだった。私は免色の言動や生き方を、何かの基準に得て当てはめて判断しようとしたことは一度もない。特に賞賛もしなければ、批判もしなかった。ただ言葉を失っていただけだった。